未来は常に過去を
もともと、平野啓一郎さんは好きな作家。
新刊の「マチネの終わりに」はいつか読もうと思っていた。
しかーし!図書館で予約するもなかなか来ない人気ぶり!
気長に待っていたのですが、YahooニュースにてWBCの2次ラウンドのキューバ戦小林から代打内川の件でこの作品の一部分が引用されており、今すぐ読みたい衝動に駆られ久々にハードカバーを購入しました。
未来は常に過去を変えている…WBCで闘う内川聖一 (スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
男女が出会い、いろいろなすれ違いと事情で離れてしまった二人が再び会うまでの大人の恋愛小説です。
出会いの初めに、男女はこのような会話をします。
「人は、変えられるのは未来だけだと思いこんでいる。だけど実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える...」
「今のこの瞬間も例外じゃないのね...」
このやり取りがラストへ向けて非常に意味を持ったものになっていきます。
さてさて。
前大会にてダブルスチールに失敗し、人目を憚らず悔し涙を流した内川。
私はその時はWBCどころか野球に興味がなかったので覚えていないのですが当時のWBCを記憶している人達からすると感慨深いものがあったのでしょう。
今期のWBCで、君はぐれメタルでも倒してきた?くらいの成長ぶりの小林からの代打内川。犠牲フライで勝ち越し点を取った時に、当時の人達の過去も変わった。
胸を打つのはひたむきさであり、未来への願い。
過去は変えられると確信したその瞬間。
今回も準決勝でアメリカに敗退したものの、すでに各々の過去は変わっている。
誰もがこんなに面白いWBCになると思わなかった。
夢果たせず、涙をこらえる内川にこちらも泣きそうになった。
過去はやっぱり変えられなかったか。いや、そんなことはない。
横で、内川に教えを乞うた22歳の鈴木誠也が悔しそうな顔をしていた。
内川の悔しさは鈴木誠也が受け継ぐと信じている。
守備の名手、菊池も自分のエラーを悔い「またWBCに出たい」とコメントした。
今まで数々のピンチを救ってきたファインプレーもこの瞬間に苦い過去に変わった。
でも悲観することはない、未来はいくらでも過去を変えていく。
過去が変わる瞬間を夢見て明日を生きていく楽しみが増えた。
- 作者: 平野啓一郎
- 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
- 発売日: 2016/04/08
- メディア: 単行本
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